相性については、さまざまな考え方ができます。
まずは、このホームページですから、カウンセリングにおけるセラピストとクライエントの相性について考えてみましょう。
年齢、性別、経験年数、オリエンテーション(いわゆる学派というか流派というか、どんなセラピーをするのかです)などの「好み」があるでしょう。
「やっぱり経験豊かな男性(女性)セラピストがいい」とか「認知行動療法よりも、心の深ーいところを見つめていく精神分析的なセラピーがいい」あるいは、その逆に「具体的な効果が感じられる認知行動療法がいい」などがあるかもしれません。
これくらい好みがはっきりしていて、学派の違いもご存知なら、あまり問題はないとも言えます。
でも、少し迷いがある時には、よくよく考える必要があります。
それは経験豊かだからといって必ずしも素晴らしいセラピストだとは限らないからです。若手のセラピストの方が、熱心かつ謙虚にやってくれる場合も多くあります。
さらにこの「成城カウンセリングオフィス」のように、若手セラピストが、所長の福島と検討を重ねながら担当を続ける場合には、若手の良さと経験者の目の両方が活用できて、良質のサービスが提供できる場合も多いのです。
反対にベテランセラピストの最大の問題は、「経験に胡坐(あぐら)をかいてしまう」「新しい知見を取り入れることを止めてしまった結果、知見や方法が古いままになってしまい、技量が停滞してしまっている」などです。
これは日々自戒しなければいけないことです。
上記のようなこと以外にもセラピストとクライエントとの相性に関しては、例えばユングのタイプ論で考えてみるというのも有効です。
つまり「内向-外向」と「思考、直観、感情、感覚」の機能のはたらき方がどの程度かによって相性を考えるというものです。
この「思考、直観、感情、感覚」の4つのうちのどれがメインにはたらいていて、さらにそれが外の世界に向かう「外向性」なのか、反対に内面に向かう「内向性」なのかによって8つのタイプが決まります。
このタイプが同じ者同士だったら、「相性ピッタリでとても楽に分かり合える」という2人ですし、違うタイプであればあるほど「分かり合うのに努力が必要」となります。
ではセラピストとクライエントは、どうなのでしょう?
「そりゃ、もちろん楽にわかりえる方がいいでしょう」という考え方もあります。
でも反対に「少し違う方が、自分を違う角度からとらえたり、これまでとは違う対人関係を持てるのかも」という可能性にもつながります。
河合隼雄先生によれば、先生の師匠のマイヤー先生(ユングの高弟)は、どうやら弟子ごとに自分のタイプを少しずつ変えていたという噂があったそうです。
つまり思考が突出した(理屈で考えすぎる)弟子には、あえて少し感情機能を使ってアプローチしたり、細かな感覚にばかり丁寧にこだわる(感覚タイプの)弟子には、あえて発想を飛躍させる直観機能で接したりなどです。
たしかに、セラピストとしては、このように少し自分本来の機能を使い分けることができるのが理想と言えます。
(続く)