このところ、ずっと硬い記事が続いていましたが、久々に柔らかいテーマです。
「相性について(3)」(2015年4月19日)で、予告していながら、長らくお待たせしてしまいました。
いよいよ相性シリーズ第4弾です。
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前回は「付き合って3か月でわかる相性診断」でしたが、今回はさしづめ「付き合って半年でわかる相性診断」と言っていいでしょう。
より本質な「人間性」にまでかかわる側面に関する相性です。
カウンセリングにお出でになるカップルで、関係がうまくいっていない場合に見られるのが、ほぼこの側面での相性とも言えます。
(1)関係性の3つの基本的機能
その基本は「母性」「父性」「仲間性」です。
以下に述べることは基本的に性別に関係なく、あくまでも「はたらき」「機能」のこととして受け取ってください。
「母性」は一言で言うなら「包容力」です。
ユング心理学的には母性にははぐくみ育てる側面と、束縛し飲み込む側面とがあるといわれますが、この際、あまり複雑に考えずに「包容力」としておきましょう。
「父性」は、一言で言うなら「リーダーシップ」です。
もちろん、リーダーシップにも「独裁的なリーダー」から「民主的リーダー」までさまざまにヴァリエーションがあります。ユング心理学的には「アニムス」(心の中の男性像)と考えてもいいでしょう。そうするとユングの妻だったエンマ.ユングが考察した、アニムスの発達段階も思い出されます。それは「力(ちから)としてのアニムス」「行為としてのアニムス」「言葉を与えるアニムス」「意味を与えるアニムス」という順で発達していくとされています。
このあたりは、機会を改めて現代日本人に即した形で解説したいところです。
でも、今回ははやり父性についても簡単に「リーダーシップ」とだけ考えてください。
そして3つめの「仲間性」とは、ユングやフロイトの言を待つまでもなく、「この現代を共に生きる仲間としての私とあなた」という意味です。
私たちは、性別にかかわらず、これらの3側面というか3つの機能を備えていると言っていいでしょう。けれども、この3つが同じように機能している人は少ないと思いますし、相手によっても変えざるを得ません。
そして、大切なのはパートナーといっしょにいる時にこの3つの機能がお互いにどのように発揮されるかということだと私は考えています。それが「つきあって6か月でよく分かる基本的相性」だと考えています。
(2)つきあって6か月でわかる基本的相性、それは『母ー子』『父―子』『仲間』としての2人
それは「二人で過ごしているときに、『母ー子』『父―子』『仲間』の時間をどれだけ持てるか」です。
つまり、「これら3つの関係を量や比率はともかく、3つともに日常的に体験できているカップルは相性がいい」ということです。
具体的にはAさんとBさんのカップルがいたとしたら、一つの理想形は以下のようになります。
「Aはいつも甘えん坊で、Bはそれを受け止めて『よしよし』している場面が多い。けれども、たまに立場が逆転して、AがBにいろいろ教えてあげたり、やや厳しく指導することもある。でも、遊ぶ時にはかなり対等に楽しめている。」
この場合は第1文はAさんが子ども役割で、Bさんは母性的。第2文ではAさんが父性的でBさんが子ども役。さらに第3文では仲間性を生きているということになります。
もちろん、AさんとBさんが入れ替わってもかまいませんし、どの役割の時間が長いかに関しては、お互いが不満にならない比率が一番いいというものです。
つきあって6か月ほど経過すると、2人の間でこれらの3つの機能の表れ方はほぼ確定してきます。そして、それはその後何か大きな環境の変化(例えば子供の誕生など)がない限り、ずっと続くと言っていいでしょう。ですので、それらがとても心地いい形で表れているなら、相性のいい二人だということになるし、どちらかが少し我慢して合わせているなら、それは今後そのアンバランスはさらに拡大していって、より苦しい関係になっていく可能性があります。
(3)つまり退行しながらどうつきあえるかということ
ここまで、読まれて何となく感じる方は多いと思いますが、つまりここで言おうとしているのは「リラックスして、退行(ある種の赤ちゃん返り)した中でも、相性がいいのかどうか」を問題にしているのです。
2015年4月19日のブログでは「talk,walk,battle」の三つの相性について解説しました。
これは言ってみれば、ちょっとよそ行きで取り繕おうと思えば取り繕える関係の相性ともいえます。
それに比べて、今回の、『母ー子』『父―子』『仲間』の関係の相性は、取り繕っていてもバレる、あるいは、取り繕わなくなってからの本質ともいえます。
つまり精神分析でいうところの「退行」した中での関係です。退行とは「それ以前の発達段階の行動様式に戻ること」です。下の子が生まれるとなぜか上の子が赤ちゃん返りして、おねしょをまたするようになったり、妙に甘え始めるというのがその典型です。
カップルも親しくなると、おねしょとまでは言いませんが必ず退行していきます。
そして、その時にこそお互いの本質があらわになるし、相性の本質も見えてきます。
このような時に、いかに上記の3種類の関係性を3種類とも体験できるかがとても大切な相性診断の目安となります。
それはスローガン的に言えば以下のようになります。
「甘え上手でいながら、時に頼りになる男/女」
「包容力があるけれど、でも過保護や束縛にならない女/男」
「普段はできる男/女なのに、時々かわいい面も見せる」
「パートナーの本質的な部分に深く共感し『本当にそうだよね』と言える人」
このように書くと、単に大人な魅力的な男女を描写しているように見えますが、あくまでもこれらが「二人の関係の中で」お互いが心地よく感じる程度で起こるのが大切です。
そしてそのためには「○○してくれると嬉しいな」とか「お願いがあるんだけれど・・・」というような形で、言葉にしながらの 甘え上手が重要です。
この「甘え上手」はとても大切なテーマなので、機会を改めて書くことにします。