ここ2回のブログでは「家事をしない男性」についてや「男をどう育てるか」というテーマで、やや男性に厳しい内容を書いてきました。
でも、もちろん、女性にも課題がないわけではありません。
なので、「女性がもっとこうするといい」と思われる点について、書いてみます。
男に家事をやってもらうためには、もちろん頼み方や言い方に「アサーティブネス(自他を尊重する自己表現)」が必要です。けれども、そのアサーティブネスを生み出すもとにあるものは何かというのが、今日のテーマです。
★日本ではセックスレスが当たりまえ?
日本のカップルの半数近くがセックスレスだというニュースが話題になってから、もう10年近くになるでしょうか?
もちろん、この状況は現在も続いています。
ーーー以下引用(https://lulucos.jp/by-s/article/574081301889880595より)
「日本性科学会」の定義では、セックスレスとは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないこと」
また、「第8回男女の生活と意識に関する調査報告書2016年(一般社団法人日本家族計画協会)」によると、セックスレス状態の日本の夫婦は47.2%に上る。
ーーー引用以上
もう10年以上前なので、ちょっとだけ書かせていただくと、当時私のクライエントさんたちの中にもすでに、「不倫なのにセックスレス」「セフレなのにセックスレス」と嘆く人もいました。
最近では、女子大学生たちにもしばしばこの悩みを聞かされます。
この問題には様々な立場から、様々な意見が出されています。
男性の性欲の変化から男女の働き方の問題、経済格差等々です。
これらすべてに一理ありますが、ここでは、あえて「女性の側の心理学的問題」に絞って考えてみましょう。
これももう10年以上前から、上記のようなセックスレスに悩む方の相談が増えてきて、そういう女性たちの共通点がおぼろげに見えてきました。
それは、皆さん十分に魅力的な方たちなのに、なぜか複数回お会いしていても「ゆったり感」が感じられないということです。
もちろん、こちらはできるだけリラックスしていただけるように「共感的うなずき、相づち」「ゆっくり間を取ること」などを心がけているのにです。
こうすると、ほとんどの方が1回目の後半部分で、すでにかなり「ゆったり感」が出てくるにもかかわらずです。
そこで、ある一人の女性に意を決して言ってみました。
「お会いしてお話を伺っていると、あなたはとても頑張り屋さんで、夫のためにもいろいろと献身的にやっていらっしゃいますよね。そして、疲れてバタンと寝てしまうことも多い。つまり、すごく頑張っているかバタンと寝てしまっているかで、その中間のゆったりする時間が持てていない感じがします。家事を少しさぼってもいいから、ゆったりと自分を慈しむ、自分をいとおしむ時間を作ってみませんか」と。
具体的にはスキンケアなどをあえてゆっくり、夫の目に触れるところでする。休日の朝や夜はあえてゆったりと、自分の好きなお茶を飲んだりして過ごすなどをアドバイスしました。
この女性は、元々とても素直な頑張り屋さんだったので、私のこのアドバイスもそのまま取り入れて、「頑張って」ゆったりと自分を慈しむ時間を作るようになりました。
すると驚いたことに、たった数週間でこれまで1年以上もセックスレスで、言葉で言うと必ず喧嘩になっていた夫が自然に誘ってきて、セックスできたとのことでした。そして、さらに彼女が自分を慈しむ行動を取っていると、何となく自分に自信が持てて、こちらからもタイミングを見て誘うことができて、とても愛情に満ちたセックスできたということでした。(どういう時がタイミングかというのは、僕が詳しく教えました)
★セルフ・コンパッション(コンパッション・フォーカスト・セラピー)
まだ、当時セルフ・コンパッション(自分への慈しみ)という言葉はあったものの、それに焦点を当てたコンパッション・フォーカスト・セラピーは、日本に導入されていませんでした。
このセルフ・コンパッション(self-Compassion)とは「苦悩や失敗場面、あるいは自分が不十分であると感じる状況において自己に向けられるケアや思いやり」と定義されています(Neff,2003)。このセルフ・コンパッションには以下の下位概念があるとされています。
(1)苦痛や困難に直面したときに自己への情動反応としての「自己への思いやり(その反対は自己批判)」
(2)自己の困難な体験への認知的理解である「共通の人間性(その反対は孤立)」(人はみんなこういう時には悩むものだと思えるか、こんなことに悩んでいるのは私だけだし、私が劣っているからだと思ってしまうか)
(3)苦しみへの注目の仕方を表すとされる「マインドフルネス(その反対は過剰な囚われ)」
これら3つは相互に関連する要素であり、セルフ・コンパッションが高い人は、困難な出来事や自己の感情をバランスよく客観的に捉えることを促すため、自尊感情とは正の相関、反芻や失敗へのおそれとは負の相関関係があるとされています。
そして、近年このセルフ・コンパッションの能力を育てることに焦点を当てた介入技法として先述のコンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)が注目されています。このCFTの介入技法は、まず脳内の脅威システム・獲得達成システム・鎮静システムの3つの働きと感情について心理教育し、最終的にクライエントの持つ恥感情や自己批判を和らげることを目標とします。そのために「自分へのやさしい眼差し」を意識した呼吸法や、「自分を批判する自分」「自分を慈しむ完璧な養育者」についてのコラム法を実施します。さらには、自分に向けた慈しみの手紙を書くなど、技法としてはまさに統合的なセラピーそのものです。
ただし、これらの介入のすべてに「自分への慈しみ」を促進するという目的がはっきりと含まれているのが特徴です。また、どのような学派のどのような技法とも合わせて用いることが可能で、相乗効果が期待できるとされています。
CFTの開発者であるGilbert,P.は、CFTはクライエントが抱える問題だけでなく、セラピスト側にも恩恵をもたらすと述べています。私も、このCFTのワークショップに参加してみましたが、3日間受けるうちにどんどん自分の中でセルフ・コンパッションが高まっていくのを実感しました。
★セックスレス解消にもCFT!
そして、10年前の上記の事例を思い出したのです。
「そうだ、あの時実際にはセルフ・コンパッション・セラピーの心理教育と同じことをやっていたんだ」
「セルフ・コンパッション・セラピーの発想はセックスレス解消にもとても有効なんじゃないか」と。私たちは、知らず知らずのうちに自己批判的になり、自分を虐げたりしています。あるいは、自己批判のあまり他者批判的にもなってしまっています。ちなみに今の日本はその傾向がどんどん高まっているように感じます。(さらに言えば、今の日本の少子化対策に欠けているのは、このセルフ・コンパッションなのではないでしょうか)
この自己批判を少しでも和らげて、自己を慈しみ、その延長で他者を慈しむ傾向が少しでも強まると、現実の人間関係もぐっと良くなるのです。
そして、それはカップルにおいては「セックスレス解消」というとても具体的・現実的・今日的な問題解決にも直結するのです。
ちなみに現在、成城カウンセリングオフィスでは、このCFTも含んだ介入技法の効果研究をしています。
興味のある方は、このホームページの「研究協力のお願い」をご覧ください。
以上