カウンセリングはいつ始めて、いつ終わるのがいいのでしょうか?
この点について、クライエントさんからも若手カウンセラーからもよく尋ねられます。
そして、これは実に難しいテーマです。
すべて一概・一律に言えない、例外の多いことなのですが、あえて単純化して書くとこんな感じです。
★いつ始めるべきか?
・・・これは、もういつでも思い立った時が最適の時です。ぜひ、そのチャンスを逃さないようにしたいものです。ただし、統合失調症やうつ病が急激に悪化した時には、カウンセリングはふさわしくありませんので、それが疑われるときには医療を優先し、主治医の指示に従いましょう。もし医師の言葉が疑わしくても、ちゃんとした臨床心理士・公認心理師なら同じことを言ってくれるはずです。
★いつ終わるべきか?
・・・これこそ難しい問題です。症状や悩みによっても、ご本人の動機づけによってもかなり変わります。私としては「カウンセリングってどれくらいの期間や回数がかかるんですか?」というご質問には以下のように答えています。
「人によって全く違うのですが、とりあえず10回通っていただくとかなり様子がわかりますし、場合によってはかなり効果も感じられます。そして20回通っていただければ、ある程度効果が実感できるはずです。」と。
そして「でも、本格的に変わるためには2年ほどかかる場合が多いです」「2年くらい通うと『これまでと全く違う日々です』とか『こんなに穏やかに暮らせるのは生れて初めてです』とおっしゃる人も少なくありません」とお答えしています。
実際そのような形で、周囲もご本人も見違えるように変化して、きっちりと終わっていかれる方も少なくありません。
また、それまで何年にもわたって薬が欠かせなかった双極性障害の方がすっかり良くなって再発もせず、でもそこから今度は人生そのものの課題に取り組んでいかれるために、カウンセリングを利用するというタイプの方もいらっしゃいます。
これらは、すべて事実なのですが、これでも表現しきれない様々な個別性があります。そして、上記のように「これまでと全く違う日々」を過ごせるようになれた方が、大多数とは言い切れないのも事実です。
そこそこ多い方々が「問題がまったくなくなったわけでも、自分ががらりと変わったわけでもないけれど、自分との付き合い方がかなりよくわかってきたし、これからは何とか自分でやって行けると思う」という感じでの終結するように思われます。
最近このような実感がとてもよく伝わるお手紙をいただきました。
以下は、最近福島があるクライエントの方からいただいたお手紙です。
ご本人の了解を得て、一部を微修正・省略のうえ掲載させていただきます。
★クライエントさんからのお手紙
このクラエントさんは、福島が担当した女性の方です。
幼少期からの家族関係の問題と、父親からの虐待、それに続く様々なトラウマティックな出来事の中で苦しんでこられた人でした。
当オフィスにおいでになる前に、2か所のカウンセリングを短期間で中断した経験のある方でした。
はじめはほぼ毎週、そして、だんだんと1か月から数か月に一回のペースになって、次の予約を3か月後にして、しばらくたった後にいただいたお手紙です。
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福島先生こんにちは。
次回のカウンセリングをお休みしたいと思い、気持ちが固まったのでお伝えします。
すぐにこの場で終了という意味では全くありません。
カウンセリングの位置づけを、私にとって「いつでも相談にゆける場所」、「どうしようもなくつらくなったら、すぐ戻ることができる部屋」として、日々の変化を自分の力で真剣に取り組みたいのです。一歩離れた場所からコツコツと。
カウンセリングを始めてからずっと感じていた問いは、『カウンセリングの終了・完結って何だろう?」ということでした。きっと人それぞれ、ゴールや節目があったり、カウンセラーの立場としての正解のような地点があるのかと考えましたが、私は『これで私の納得いく答えは出た」「ここまでで、自分の成長は終わりだ」とは、きっとずっと思えなくて、それならば、曖昧なまま終わりを決めず、今、明確にあるベストなことを実行しつづけてゆくのが私の思う「自分とカウンセリングとのちょうど良い関係のありかた」だと思っています。
人生も人も状況も変わってゆくのに、悩みも変化してゆくのに、「もうこれで大丈夫、先のこともやってゆける」とは、私は先生に言えません。
でも、今は、ものすごい苦境の中にある暗闇から抜け出ていて、自分のつらさや悲しみを聴いてほしいという思いがあまりなく、、、カウンセリングで学んだことや変わった自分で、前を向いて生きてみたいと感じます。自分をこれから幸せにしてゆくぞ!と希望を持てたり、自らの経験をいつか誰かのために優しい力に変えたいなと、思うのです。
今までは助けてもらったり必要な支援、また愛情を与えてもらう側でしたが、その立場はもう卒業かなと思うのです。
今度は私が、自分で自分をよろこばせたり自身で自己成長を、試行錯誤を重ねていく時です。そして、今まで私を決して諦めないでくれた先生からの心からの安心感、信頼、無条件の愛や支えを受け取ったぶん、今度は私が、なにかや誰かのために、それを注げる人になりたいと思います。
(中略)
内向的、繊細でとても過敏な性格の自分が生きてゆくには、何に気をつけて、何を大切にしていけば苦しくないのかを、長くカウンセリングで学びました。(中略)つらさに自らを追い込まぬように、傷付いた後の「感情と出来事の受け止めと、捉えなおし」ができたら、それは強い成長として、今後のパワーになります。(中略)
そうした一連の気づきや学びを、静かに導いて教えてくれて「変化」への作業をサポートしてくれのが、福島先生でした。いくつものチャレンジもできました。
特別大それた何者かになれた訳じゃないけど、私の人生は、こうした「生き方の術を、自分らしくフィットさせる方法」、「挫折や逆境が教えてくれたことを自分のために武器や味方にすること」によって、大きく変わりました。光の部分と影の部分があって、その中心に立ち続けることはできないけど、角度を変えつつ身動きがとれる、ダンスのバリエーションを増やせた感じですごく嬉しいです。
なので、カウンセリングをしていて、ながーく先生とお付き合いさせていただく中で、いつしか私は私と仲良くなりたいと思えたり、私がとても好きになりました。すごく大事な、人生の自己投資でした。(中略)カウンセリングをして、先生と関わることができて私は多くの状況が改善し、私の内面や生き方も変わりました。でも、私にあった「弱み」を捨ててしまったり、涙の記憶を忘れてしまわぬよう、「くじけた私」をいつまでも憶えていたいです。ひとつひとつを、心の中で小さな優しさの種にして、つらい事や痛みを体験した人の気持ちを、大切にしたいからです。
これからは、先生にご相談をしたい時にピンチになる前に先生を訪れて、自分で見落としていることの自己点検をし、自分の力で前に進める時は、自分の力や周りの人たちの支えを利用してがんばってゆく、そんなやり方で力をつけて行きたいと思います。
これが今の嘘のない気持ちです。
************引用ここまで
いかがでしょうか?
問題がきれいさっぱりとなくなって終わるのとは違う、「日々成長しながら、ここからは自分の力で取り組んでみたい」というタイプの終結の様子がとても率直な文章でつづられた、素晴らしいお手紙だと思います。
このようにだんだんとカウンセリングの間隔をあけていって、「また、相談したいことができたらピンチになる前に行く」という形の終結もとてもリアルで現実的だと思います。
カウンセリングで何をつかんでいかれたかは、もう解説の必要がないくらい、明確に書かれています。
カウンセラーとして、このようなリアルで、でも確実に成長されている様子を、お手紙や直接お会いして教えていただけるのは、本当に嬉しいことです。
まさに「カウンセラー冥利に尽きる」とはこのことだと思います。
以上