ここ数年、カップル・夫婦問題に関する相談件数が爆発的に増えています。とくにコロナ禍でのいわゆる「コロナ離婚」を含めて、「別れ」の問題を抱えておられるカップル・ご夫婦の依頼も増えています。
考えてみると、夫婦カウンセリングの専門家たちは「関係修復」を大切にしている傾向が強く、どちらかが「もう絶対に分かれる」と固く決意している場合には、カウンセリングを引き受けないもしくは、その時点で終了ということも多いようです。
けれども、実際にはカップル・夫婦のどちらかがすでに固く別れを望んでいて、もう片方がそれを望んでいないという状態の人たちはたくさんおられます。そして、その話題になるたびに双方ともがとても苦しみ、傷ついているのです。
あるいは、別れることそのものには同意していても、親権や財産の問題もあり、それらを二人きりでは冷静に話し合えないけれども、弁護士に依頼して徹底的に戦うというのは避けたいというご夫婦もおられます。
そして、実際にお会いしてお話を伺ってみると、別れを望む側も、それを拒む側も一致して「穏やかで心が通じる話し合い」を何よりも望んでいるということもわかります。
カウンセラーとしては、お二人が最終的に別れる別れないは、ご本人たちの判断しかないのですが、結論はどうなるにしても「穏やかな話し合い」の場を提供するというのが、最大の任務となります。
一口に「穏やかな話し合い」と言っても、話題が話題ですので、どうしても興奮したり拒否したり、攻撃し合ったりということになります。その時にカウンセラーは、「多方向への肩入れ」つまり「どちらにも味方する」という姿勢で、時には「ちょっと待ってください!!」と興奮する二人を止めることもあります。
「ちょっと待ってください。今、お二人は極論に走ってますので、少し落ち着きましょう」というのは、私がそういう時によく発する言葉です。
上記の「多方向への肩入れ」というのは、家族療法で大事にされている姿勢です。これは、「単なる中立」ではなく、家族メンバー全員に対して共感し、代弁し、通訳もするということです。
さらに、もう一つ大切なことは「対等性」だと思っています。年齢・性別にかかわらず人は対等であること、あるいは経済力や体力とも関係なく人は本来対等であるということが、カップル・夫婦問題を扱うカウンセラーには不可欠の姿勢だと感じています。
つまり「稼ぎの少ないお前は、発言権もない」とか「心身の弱いあなたには、物事を決める権利はない」などの発言には、穏やかではありますが、はっきりと反論する事になります。
このような姿勢で「穏やかな話し合い」の場を提供し続けると、そこには「心の通じる話し合い」が実現され、その結果、関係が修復されるカップル・夫婦もおられますし、お互いが笑顔で別れを決断するという結末を迎える場合もあります。
このような別れを支援するのも、その人や関係するすべての人のこれからの人生のためにも大切なことだと考えています。